心房細動

概要

心房細動(AF)は、全世界で最も頻度が高い不整脈の一つであり、全人口の約1~2%が罹患していると報告されています。特に高齢化の進行に伴い今後さらに増加し、将来的にはその有病数が3倍以上に達する可能性が指摘されています。日本では約100万人以上が心房細動を有すると推定され、70歳を超えると有病率が急激に上昇し、80歳以上では10%を超えるとされます。心房細動は脳梗塞のリスクを約5倍に高めるなど、重篤な合併症を引き起こすため、医療費や介護負担も含め社会的影響が大きいことがわかっています。さらに、新しい治療薬やカテーテルアブレーションの進歩により、適切な管理が行われれば、合併症予防や生活の質の維持が期待できます。以上の疫学データは日本循環器学会や欧米の大規模研究(ESC、AHA、ACCなど)に基づき、最新のガイドラインでも心房細動患者の早期介入が推奨されています。今後も超高齢社会を迎える日本において、心房細動対策は重要な医療課題の一つです。

診療方針

当クリニックでは日本循環器学会、欧米循環器系ガイドライン、およびオンライン医学テキスト「Up to Date」に準拠します。

ガイドライン最新版(2025年1月時点)
  • 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同 ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療(2024年)
  • 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン(2022年改訂版)
  • 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同 不整脈非薬物治療ガイドライン(2021年改訂版)
  • 日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同 不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版)
  • 2024 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation
  • 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation

初診時の主な診療内容

1. 身長・体重測定、院内血圧測定(2回測って平均値を取ります)

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問診と診察 現在および過去の健康問題や現在の症状に関して詳細なお話を伺い、心臓の聴診などの診察を行います。
検査 心電図、ABI、胸部レントゲン、心エコー、24時間ホルター心電図検査、血液生化学検査、尿検査などを行います。

2. 診察と検査結果に基づき診断または状態の評価を行います。

診断に当たって重要なことは、心房細動の病型評価(発作性、持続性、永続性)と原因(弁膜症性、非弁膜症性など)の検索です。

基本的な検査に加えて、心房細動の評価に24時間ホルター心電図検査と原因(基礎疾患)として最も重要な心臓病の精査に心エコーが必須となります。

3. 治療方法

病型と血栓症リスク評価に基づいた適切な薬剤の選択が重要です。
治療方針は、主に下記3つとなります。Q&Aでそれぞれに対する治療法を説明します。

  1. 心拍数コントロール
  2. 心拍リズムコントロール
  3. 血栓塞栓症予防(抗凝固療法)

心房細動 Q&A

Q1. 心房細動とはどのような不整脈ですか?
A1. 心房細動(しんぼうさいどう)は、心臓の上部にある心房が不規則に、非常に速く動くことで起こる不整脈(リズムの乱れ)です。
心房は心臓のポンプ機能をサポートする役割を果たしますが、心房細動ではこのリズムが乱れるため、心臓が効率的に血液を送り出せなくなります。
これにより、血液が心房内にうっ血することがあり、血栓ができる可能性があります。
また、心拍数が速い(150/分以上)状態が数日間持続すると心臓が疲れて心不全を起こすこともあります。
Q2. どのような人に起きますか?
A2. 心房細動は、年齢が上がるほど発症リスクが高くなります。特に、60歳以上の方や、高血圧(高血圧があると心臓に負担がかかりやすい)や心疾患(心筋梗塞や心不全など)を持っている方に多く見られます。
また、糖尿病、甲状腺疾患、肥満、睡眠時無呼吸症候群、アルコールの過剰摂取なども発症を引き起こす要因になります。
Q3. 症状はどのようなものですか?
A3. 心房細動の症状は人によって異なります。一般的には、以下のような症状があります。
  • 動悸(どきどきする感じ)
  • 息切れ
  • 体がだるい、疲れやすい
  • 胸の痛みや不快感
  • めまいやふらつき
ただし、症状が全くまたはほとんどない患者さんも多く見られます。
この場合でも、放置しておくと後に大きな問題になることがあります。
Q4. 無症状でも受診した方が良いですか?
A4. はい、無症状でも心房細動の診察と治療を受けることが大切です。
心房細動は、無症状で健診などで指摘されることも多く、放置すると重大な健康障害を引き起こすリスクの高い疾患です。
心房細動が無症状でも血栓ができるリスクがあり、その血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こすことがあるからです。
また、心房細動があることで心臓に負担がかかり、心不全やその他の合併症を引き起こすリスクもあります。
Q5. 心房細動と関係している病気や状態を教えてください。
A5. 心房細動に関係する病気や状態は以下のようなものです。
  • 心疾患:弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症)、心不全、心筋症、心筋梗塞など、心臓の構造に異常がある場合。
  • 甲状腺疾患:甲状腺ホルモンが異常になる(バセドウ病や亜急性甲状腺炎など)と、心房細動を引き起こすことがあります。
  • 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が止まることが心房細動のリスクを高めます。
  • アルコールの摂取:心房細動の発作を誘発します。特に飲酒後の翌朝に発作が起きることが多く見られます。
  • 高血圧:心臓に負担をかけ、心房が不規則に動きやすくなります。
  • 糖尿病:高血糖状態が心血管に悪影響を及ぼします。
Q6. どのような検査を行いますか?
A6. 不整脈は、心臓の電気活動の異常です。電気活動を見るために以下の検査が必須となります。心房細動が疑われる場合、以下のような検査が行われます。
  • 心電図(ECG):心臓の電気的な活動を記録する検査で、心房細動を確認できます。
  • ホルター心電図:24時間にわたって心電図を記録することで、不整脈の詳細なパターンを確認します。
  • 心エコー(超音波検査):心臓の構造や機能を詳しく見るために使用され、血栓の有無をチェックすることができます。
  • 血液検査:甲状腺機能や電解質のバランスを確認するための検査です。また、治療に際して腎臓や肝臓の状態をチェックする必要があります。冠動脈CT検査も:虚血性心疾患(リンク)の可能性がある場合には考慮します。
Q7. 治療に関して教えてください。
A7. 心房細動の治療は、症状の改善や血栓を防ぐことを目指します。主な治療方法は以下の通りです。
  1. 薬物療法:
    β遮断薬(ビソプロロールやカルベジロールなど)やカルシウム拮抗薬(ジルチアゼムやベラパミルなど):心拍数を低下させ正常域(心拍数:50-80/分)に保つために使います:心拍数コントロール
    抗不整脈薬(フレカイニドやアミオダロンなど):心臓のリズムを正常(洞調律)に戻し、心房細動を起こさないように予防するための薬:心拍リズムコントロール
    抗凝固薬(アピキサバンやリバロリサバンなど):血液をサラサラにする薬で血栓を予防するために使用されます:血栓塞栓症予防(抗凝固療法)
  2. カテーテルアブレーション:心拍リズムコントロールに対して薬での治療効果がない場合、カテーテルを使って心臓の異常な電気信号を遮断する手術です。
  3. 電気的除細動(電気ショック):急性の心房細動に対して、心臓に電気ショックを与えて正常なリズムに戻す方法です。
Q8. 心房細動の病型と治療方針を教えてください。
A8. 心房細動は、以下の3つの病型に分類されそれぞれ治療法が異なります。
  1. 発作性:心房細動と正常調律(洞調律)を繰り返すもの。この病型の多くは、発作が起きてから通常24時間以内に自然に(無治療で)洞調律に戻ります。発作予防のための抗不整脈薬またはアブレーションが主な治療となります。
  2. 持続性:
    7日以上心房細動が持続し一度も洞調律に戻らない状態。この状態では通常自然に洞調律に戻ることはなく、洞調律に戻すためには抗不整脈薬や電気ショックなどの治療が必要になります。
    ただし、心房細動が起きてから48時間以上経過していると心臓内に血栓が形成されている可能性があり、この状態で洞調律に戻すとこの血栓が血流に乗って脳梗塞を引き起こす危険性があります。
    この場合には、抗凝固療法を4週間以上行って血栓を消失させてから、洞調律に戻す治療を行います。
    または、経食道心エコー(内視鏡のように口からエコーの管を入れて心臓を観察するエコー)で心臓内に血栓がないことを確認してから、洞調律に戻す治療を行います。
    洞調律に戻した後は、発作予防のための抗不整脈薬の継続内服またはアブレーションが主な治療となります。
  3. 永続性:
    薬物治療や電気ショックでも洞調律に戻すことができず心房細動が続くもの。現時点ではアブレーションも無効とされています。心拍数コントロールによる心不全予防と抗凝固薬による血栓塞栓症予防が主になります。

治療は、上記の心房細動の病型に加え原因や患者さんの状態も考慮して選択されます。どの方法が最適かは医師と相談し、決定することが大切です。

Q9. 心房細動に対して生活上気をつけることを教えてください。
A9. 生活習慣では以下の改善に努めます。
  • 節酒 or 禁酒
    アルコールは心房細動の発作を誘発しやすいため、控える方が望ましいです。
  • 禁煙
    喫煙は血管障害の進行を促進し、心臓病や不整脈を悪化させるリスクがあります。
  • 十分な睡眠と適度な運動
    心臓や血管の負担を軽減し、全身の健康維持に役立ちます。睡眠は、7〜8時間程度は確保し、運度はウォーキング8000歩/日を目標に、少しでも多く行いましょう。現在2000歩/日程度であれば、3000歩/日に増やすことでもよりよい効果が得られます。
  • 体重管理
    肥満は心臓に大きな負荷をかけるため、標準体重の維持が推奨されます。
  • 塩分制限
    理想的には6g/日、できるだけ8g/日以下にしましょう。

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