
亜急性甲状腺炎
SUBACUTE THYROIDITIS
破壊性甲状腺炎
甲状腺の炎症や損傷による甲状腺ホルモンの放出。亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など
亜急性甲状腺炎
自発痛、圧痛を伴う甲状腺腫を主とする炎症性疾患です。
男女比は1:7と他の甲状腺疾患同様に女性に多く、ウイルス感染や遺伝的要因などとの関連が示唆されていますが、未だ原因は明らかではありません。
一般には数か月の経過で治癒しますが、10~20%程度は回復期に再燃することが知られています。急性期は甲状腺組織の破壊による甲状腺ホルモン上昇を認めますが、回復期に一過性の甲状腺機能低下(ホルモンが不足)を経過して正常機能に戻ります。
一部の症例では永続的に甲状腺機能低下症を示す場合があります。
症状・徴候
風邪に似た上気道症状が先行する場合があります。甲状腺の自発痛、圧痛を伴う甲状腺の腫脹や発熱、急性期は甲状腺ホルモン過剰による動悸や手の震えなどがみられます。
検査
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3, FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定します。炎症反応、末梢血液像、肝機能、必要に応じ甲状腺自己抗体などを測定します。甲状腺超音波では疼痛部に一致した特徴的な低エコー像を確認できます。
治療
自然治癒する場合もあり症状が軽微な場合は経過観察しますが、甲状腺ホルモン過剰による症状の緩和が必要な際は、β遮断薬を使用します。発熱、頸部の疼痛が強く炎症所見を呈する場合は非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)を、自覚症状が強くNSAIDsで改善を認めない場合は一時的なステロイド内服が検討されます。
無痛性甲状腺炎
痛みの伴わない軽度の甲状腺腫と甲状腺ホルモン過剰を呈する甲状腺炎です。
一般的には無治療でも自然寛解する病気ですが、経過中に甲状腺ホルモン値の変動を伴うため、症状について対症療法を行います。
症状・徴候
一般的に、初期は甲状腺ホルモンが多いことによる動悸、体重減少、汗をかきやすい、手の震えなどをきたします。バセドウ病と異なり、このホルモン過剰は組織の破壊によるものであるため、細胞が修復されれば徐々に回復し、通常は3か月以内で自然改善するのが特徴です。ただし、その過程で甲状腺ホルモン低下に転じることがあり、慎重な経過観察が必要です。多くの場合で最終的にホルモン値は正常化しますが、中には機能低下が遷延するため甲状腺ホルモン製剤の補充を行うこともあります。
検査
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3, FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を測定します。甲状腺自己抗体の測定や、未治療のバセドウ病との鑑別のため核医学検査(シンチグラフィ)を行うこともあります。
治療
甲状腺機能は自然軽快が見込まれるため、抗甲状腺薬は使用せず、動悸・頻脈などに対して対症療法としてβ遮断薬を使用します。治癒過程で一過性に甲状腺機能低下(ホルモン低下)をきたすことがあります。機能低下症が遷延する場合は、甲状腺ホルモン製剤の内服治療を行います。
甲状腺の概要は甲状腺疾患を参照ください。