家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholestrolemia : FH)は、遺伝性の高LDLコレステロール血症です。悪玉であるLDLコレステロール(LDL-C)が、生まれたときから異常高値となります。遺伝の形式により重症型(ホモ型)と軽症型(ヘテロ型)に分かれます(詳細はQ3参照)。日本では、重症型(ホモ型)は100万人に一人と稀な病気ですが、軽症型(ヘテロ型)は200〜500人に一人と決して稀な病気ではありません。放置すると若いとき(20歳代)から動脈硬化が進行して狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを起こします。

診療方針

当クリニックでは基本的に米国心臓協会米国心臓病学会、日本動脈硬化学会のガイドライン最新版、およびオンライン医学テキスト「Up to Date」に準拠します。

ガイドライン最新版(2019年12月時点)

  • 2018 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines.
  • 日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症診療ガイドライン 2017

家族性高コレステロール血症 Q&A

Q1. 家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholestrolemia : FH)とはどのような病気ですか?
A1.

悪玉コレステロールであるLDLコレステロール(LDL-C)が異常高値となる遺伝性高コレステロール血症です。遺伝の形式により重症型(ホモ型)と軽症型(ヘテロ型)に分かれます。

日本では、重症型(ホモ型)は100万人に一人と稀な病気で、国から難病に指定されています。軽症型(ヘテロ型)は200〜500人に一人と決して稀な病気ではありません。

Q2. 通常の高コレステロール血症とどう違うのでしょうか?
A2.

通常の高コレステロール血症は、生活習慣の乱れなどに伴って30歳代からLDLコレステロール(LDL-C)が異常高値になることが多いのですが、家族性の場合は生まれたときからLDL-Cが異常高値を示します。

また、LDL-Cが140mg/dL以上で高コレステロール血症と診断される家族性ではない高コレステロール血症の場合はLDL-Cの値は140-160mg/dLのことも多いのですが、家族性の場合は最初から180mg/dL以上と非常に高値となります。

特にホモ型の場合は600〜1200mg/dL以上と極端な高値を示しますので、このように極端なLDL-C高値を見た場合にはホモ型を強く疑います。ヘテロ型のLDL-Cの平均値は250mg/dL程度ですので、250mg/dL以上あればFHを強く疑います。

FHは、生まれたときからLDL-Cが異常高値ですので動脈硬化の進展が若いときから始まります。動脈硬化による心筋梗塞などの心血管系の合併症は、男性で20歳代から発症し40歳代でピークとなります。女性の発症時期は少し遅れて30歳代から始まり50歳代でピークとなります。

合併症の発症を予防するためには、早期の診断と治療開始が重要です。

Q3. どのように遺伝しますか?
A3.

家族性高コレステロール血症(FH)の遺伝に関して下記図1、2で説明します。FHは、「常染色体優性遺伝」という形式の遺伝病です。ヒトは、父親と母親から一個ずつ受け継いだ2個一組の遺伝子を持っています。

優性遺伝というのは、異常な遺伝子を一個でも持っていれば、その異常が発現してしまう遺伝形式です。

遺伝のもう一つの形式に「劣性遺伝」があり、これは異常遺伝子が一つだけの場合はその異常は発現せず(保因者と呼ばれます)、遺伝子が2個とも異常の場合に発現する形式です。

両親の遺伝子は父親2個と母親2個あり、子はそれぞれから一個ずつ受け継ぎますので、組み合わせは4通りになります。

そして2個の遺伝子のうち1個だけが異常な遺伝子の場合をヘテロ型、2個とも異常の場合をホモ型と呼びます。

図1

ヘテロ型は、両親のどちらかが異常な遺伝子を1個持っている場合で、子がその異常な遺伝子を1個引き継いだ場合に起きます。子がFHになる確率は50%です。

図2

ホモ型は、父親と母親の両方が異常な遺伝子を持っている場合のみに起きます。この場合の子は、正常が25%、ヘテロ型が50%、ホモ型が25%の確率となります。

Q4. 症状はありますか?
A4.

通常、自覚症状はありません。血液検査で高LDLコレステロール血症を調べる必要があります。

一部の患者さんにLDLコレステロールが沈着した黄色の「こぶ」が、手の甲、肘、膝、瞼などに見られることがあります。これを皮膚結節性黄色腫といいます。

アキレス腱が肥厚し硬くなった腱黄色腫を認め、レントゲン撮影でアキレス腱の肥厚を計測することによりFHの診断をつけます。(Q5参照)

角膜(黒眼)の周囲に白色のコレステロール沈着を認めることもあり、「角膜輪」と呼びます。

Q5. どのようにして診断しますか?(診断基準)
A5.

日本動脈硬化学会 家族性高コレステロール血症(FH)診療ガイドライン2017の診断基準を示します。

3項目中2項目以上でFHと診断します。

  1. 高LDL-C血症(未治療時のLDL-C値 180mg/dL以上
  2. 腱黄色腫(手背、肘、膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫
  3. FH あるいは早発性(男性55歳以下、女性65歳以下)冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)の家族歴(2親等以内)

アキレス腱の肥厚は、レントゲン撮影で計測します。9mm以上で「肥厚あり」と判定します。
当クリニックでは、初診または未治療時のLDLコレステロールが180mg/dL以上あれば直ちにアキレス腱撮影と計測を行い即日診断します。

レントゲン撮影によるアキレス腱肥厚

また診断にあたり、他に原因がある二次性高コレステロール血症を除外しておく必要があります。

例:甲状腺機能低下症、薬剤性
より確実な診断方法は遺伝子検査ですが、現時点では保険診療の適用外ですので全額自己負担となります。

Q6. 家族性高コレステロール血症と診断された場合、他に気をつけることはありますか?
A6.

家族性高コレステロールでは動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞の危険性が非常に高いことから、以下のこれらに関係する診察や検査を定期的に行うことが重要です。

  • 動脈硬化を促進させる他の病気(糖尿病や高血圧症)の定期的なチェックと適切な管理
  • 心電図・ABI・胸部レントゲン・心エコー
  • 労作時の胸部症状(胸痛、胸部が圧迫される・締め付けられる、呼吸困難など)が出てきたときは、トレッドミル運動負荷心電図検査やホルター心電図検査、冠動脈造影CT検査などによる精査が必要になります。
Q7. 治療法を教えてください
A7.

お薬による治療が基本です。生活習慣の改善も重要ですが、FHは残念ながら生活習慣改善だけではコントロールできず、お薬が必須です。

第1選択薬はスタチン(強度スタチン:ロスバスタチン、アトルバスタチン)です。
スタチンの最大量でもコントロールが困難な場合は、コレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブ(ゼチーア)を追加します。
この2種類でもコントロールがつかない場合は、比較的新しい薬剤であるPCSK9阻害薬(エボロクマブ、アリロクマブ)を使用します。

ヘテロ型は薬物療法でほぼ問題なく治療可能ですが、ホモ型は薬剤では十分な効果が得られないことが多く、血液浄化法であるLDLアフェレシスが必要になります。
これは血液透析と同じように血液を体外に循環させてLDLコレステロールを吸着・除去する治療です。1-2週間に一回の治療が必要です。
当クリニックでは行えませんので、必要な場合には適切な施設へご紹介します。

現時点(2019年12月)で注射薬しかなく2週間または4週間に一回皮下注射で投与します。自己注射が可能なキットも使用可能です。

Q8. LDLコレステロールは、どこまで下げれば良いのですか?(治療目標)
A8.

治療目標

  • LDLコレステロール 100mg/dL未満
  • 上記目標に到達できなければ治療前値の50%以下
Q9. 治りますか?
A9.

現時点では、残念ながら治すことはできません。生活習慣の改善とともにほぼ生涯にわたってお薬を服用することが必要です。現在ではコレステロールを低下させる効果の高い薬剤が開発されており(Q7参照)、適切にコントロールすることで合併症を予防することが可能です。