原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症は、高血圧症患者の5~15%を占め二次性高血圧症の代表的な原因疾患です。通常の高血圧症(本態性高血圧症)と比べても脳血管疾患や心不全・狭心症や心筋梗塞、心房細動などの不整脈、末梢動脈疾患、腎障害などの合併症が3-5倍多いことが報告されています。
病型によっては手術により根治することも可能であり、お薬による治療も通常の降圧薬とは第1選択薬が異なるため、最適な治療のためには適切な早期診断重要です。

診療方針

当クリニックでは、日本高血圧学会ガイドライン、日本内分泌学会コンセンサス・ステートメントなどに準拠します。 ガイドライン/コンセンサス・ステートメント 最新版
  • 日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン 2019
  • 日本内分泌学会 わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント 2016
  • 原発性アルドステロン症診療マニュアル 第3版

原発性アルドステロン症 Q&A

Q1. 原発性アルドステロン症とはどんな病気ですか?
A1.

副腎(Q2で説明しています)の片側にできた腫瘍(アルドステロン産生副腎皮質腺腫:良性腫瘍)や左右両方の副腎の働きが過剰になって(過形成:特発性アルドステロン症)、アルドステロンというホルモンが過剰に作られる病気です。高血圧症の原因となる病気で最も頻度が高く、全高血圧症患者さんの10%程度がこの病気が原因であると報告されています。

原発性アルドステロン症のような原因のある高血圧症を二次性高血圧症とよびます。体質や加齢、生活習慣の乱れなどが重なって起きてくるような特定の原因となる病気がない高血圧症は本態性高血圧症と呼ばれています。

Q2. 副腎とはどのような臓器ですか?
A2.

副腎は、腎臓の上についている小さな臓器で、左右にそれぞれ1つ合計2つあります。副腎の主な働きは、生命維持に必要なホルモンの産生・分泌です。副腎ホルモンには、主に以下の3種類があります。

1. アルドステロン 体内の水分と塩分のバランスをとり、余分なカリウムを腎臓から尿中へ排泄させるホルモン
2. カテコールアミン 自律神経を調節し、血糖や血圧を調節しているホルモン
3. コルチゾール 血糖を上昇させ、血圧や免疫などその他様々な体内の働きを調整しているホルモン
Q3. アルドステロンが多いとどうなりますか?
A3.

体内の水分や塩分量が増加し、その結果血圧が上がり高血圧症になります。カリウムの排泄が増加し、低カリウム血症を起こすと筋力が落ちたり疲れやすくなったりします。

また、アルドステロンが心臓、血管、腎臓に長期間過剰に作用することでこれらの臓器に障害が起きて、心不全、心房細動などの不整脈、脳卒中、腎不全などが起きる可能性が通常の高血圧症(本態性高血圧症)に比べて3~5倍高いことが知られています。

Q4. 副腎腺腫はがんですか?
A4.

いいえ、がんではありません。進行してがん化することもなく転移もしませんので心配はありません。しかし腫瘍のサイズが大きいとき(4cm以上)は、がんの可能性がありますので精査が必要です。

Q5. 原発性アルドステロン症になる原因はありますか?
A5.

家族性(遺伝性)の場合と遺伝子変異によるものとが考えられています。

Q6. 症状はありますか? また、どのようなときに調べる必要がありますか?
A6.

症状は、低カリウム血症による脱力などが生じることもありますが、一般的に症状はないことがほとんどです。

ほとんどの場合、高血圧症が原発性アルドステロン症を疑う唯一のきっかけです。しかしすべての高血圧患者さんを調べる必要はなく、下記の高血圧患者さんで詳しい検査が必要となります。

  1. 若年性(40歳以下)高血圧症
  2. 若年(40歳以下)で脳卒中を起こした方
  3. 高血圧の薬が効きにくい(高血圧の治療に3種類以上の降圧薬が必要となる場合)
  4. II度以上の高血圧症(血圧160/100mmHg以上)
  5. 睡眠時無呼吸症候群がある
  6. 血液検査で低カリウム血症がある
  7. ドックなどでおこなう腹部CTで副腎腫瘍を指摘された場合
Q7. どのような検査が必要ですか?
A7.

検査は3段階に分かれ、1. スクリーニング → 2. 機能確認 → 3. 病型確認の順で行われます。

1. スクリーニング検査
(血液検査:アルドステロン・レニン比
アルドステロンが多く作られていることを調べる検査です。
まずこの検査でアルドステロンが多く作られていることが確認できれば、次の機能確認検査を行います。
2. 機能確認検査 アルドステロンが、自律的に(他のホルモンやストレスや体位(立っているか、寝ているか)などの影響を受けずに)多く作られていることを確認する検査で以下の3種類に検査があります。すべてを行う必要はなく、どれか1つを選んで行います。この段階で陽性となれば確定診断となります。当クリニックでは、入院の必要がなく簡便で負担が少ない(a)を行います。(b)と(c)は入院が必要となります。
  • (a)カプトプリル試験
  • (b)生理食塩水負荷試験
  • (c)フロセミド立位負荷試験
3. 病型確認 機能確認試験で原発性アルドステロン症と診断後に手術を行うかどうかを決めるために行う検査です。
  • (a)副腎CT:外来でできます
  • (b)カテーテル検査(副腎静脈サンプリング):入院が必要です
Q8. スクリーニング検査について教えてください。
A8.

スクリーニング検査は、血液検査です。血液中のアルドステロン濃度(PAC)とレニンというホルモンの活性(PRA)を測定し、以下の基準で陽性と判定します。

アルドステロンが多く分泌されていること:血漿アルドステロン濃度(PAC) 120ng/dL以上

正常な場合、血圧にかかわるホルモンの1つであるレニンの産生が多いとアルドステロンも多く産生されます。アルドステロンの産生が増えているにもかかわらず、レニンの産生が比較的少ないとアルドステロン・レニン比(ARR)が大きくなります。この比が200以上の場合にアルドステロンが自律的に産生されている可能性が高いと考えて陽性と判断します。

方法

  • 検査当日はお薬は内服せず午前9時に来院していただきます。
  • 受付後に30分間静かに横になっていただいてから採血します。
  • 結果は1週間ほどで出ます。
Q9. 機能確認検査について教えてください。
A9.

現在最も良く行われている検査は、カプトプリル試験です。当クリニックでもこれを行います。院内でカプトプリルという薬剤(ACE阻害薬=降圧薬)を服用していただき、服薬の前後で血症アルドステロン濃度(PAC)とレニン活性(PRA)を測定します。計3回の採血を行います。

30分安静臥床後採血 → カプトリル50mg内服 → 60分と90分後に採血

カプトプリルはアルドステロン濃度(PAC)を減らしレニン活性(PRA)を上げますが、原発性アルドステロン症の場合はアルドステロンが自律的に作られているためカプトプリルを服用してもアルドステロン濃度(PAC)は減少せずレニン活性も上がりません。60分または90分後のアルドステロンレニン比(ARR)200以上で陽性と判断します。結果は1週間ほどで出ます。

この検査が陽性となれば原発性アルドステロン症と確定診断します。

Q10. 病型確認検査に関して
A10.

原発性アルドステロン症は、片側のホルモン産生腫瘍(腺腫)によるものと両側のホルモン産生増加(過形成)による2つの病型があります。この2つを鑑別するために行う検査が病型確認検査です。鑑別する目的は、適切な治療法の選択のためです。前者(腺腫)は、手術(片側副腎摘出)により完治できる可能性があり、後者(過形成)は、副腎を両側2つとも取ることはできないため手術はできず、薬剤による治療となります。検査は以下の2つがあります。

1. 副腎CT(造影剤を使用します) 菊名記念病院へ検査依頼します(受診=医師の診察の必要はありません)。結果説明は、検査後1週間以内に当クリニックでおこないます。
2. カテーテル検査(副腎静脈サンプリング) 入院が必要ですので、必要と判断した場合や検査結果により手術を希望される場合に横浜労災病院 内分泌科などへ紹介します。
Q11. どのような治療法がありますか?
A11.

手術とお薬の2種類があります。手術は、片側性の副腎腺腫で適応となります。両側性の過形成の場合は手術はできません。お薬は、どちらの病型でも使用できます。アルドステロンの作用を抑えるミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)が第1選択薬です。

Q12. 治療に使うお薬について教えてください。
A12.

アルドステロンの作用を抑えるミネラルコルチコイド拮抗薬(MRA)が第1選択薬です。アルドステロン過剰による有害な作用を抑え、高血圧や低カリウム血症を改善します。MRAには、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)、エプレレノン(商品名:セララ)、エサキセレノン(商品名:ミネブロ)の3種類があります。

スピロノラクトン 最も歴史のあるお薬です。ジェネリック薬もあり安価で用量調整の幅が大きいというメリットがありますが、男性ホルモンも抑えるため男性は乳房が女性のように大きくなる副作用(女性化乳房)が起きることがあります。
エプレレノン スピロノラクトンより新しいお薬です。アルドステロン作用をより直接的にブロックするため女性化乳房のような副作用はありません。
エサキセレノン 最も新しいお薬で、2019年3月に販売開始されました。他の2剤が使用できない腎機能が低下している患者さんにも使用可能とされますが、新薬のため2020年3月まで長期処方ができず原発性アルドステロン症への治療経験もまだ少なく今後に期待したい薬剤です。

MRAで十分な降圧効果を得られない場合には、ACE阻害薬またはARBやカルシウム拮抗薬など他の降圧薬を併用します。